解体する前に残す書類と、止める設備——更地にしてから戻せないもの
2026年9月2日、法務局「不動産登記のよくあるご質問等」「建物を取り壊した/建物を新築した」、松山地方法務局「不動産登記に関するよくある質問」、e-Gov法令検索「不動産登記法」「浄化槽法」、環境省「建物を壊すときにはどうしたら良いの?」「石綿事前調査結果の報告について」および2022年3月1日報道発表、国土交通省「空き家対策 特設サイト」を各公式サイトで確認。
更地にしてから戻せないものは三つあります。家の中にあった書類、建物に付いていた設備の記録、そして建物そのものの登記です。解体の日を決める前に、書類を家から出して手元に置き、設備の停止と届出を済ませ、解体後の建物滅失登記を誰が出すかを決めておきます。
権利証は再発行されません。建築確認済証も再交付されません。浄化槽の廃止には届出があり、建物を壊したら1か月以内に登記が要ります。どれも、更地になった後に「無かった」と分かると取り戻す手段が限られるものです。
解体後も要る書類——家の中から先に出す
家財の片づけと同時に、次の書類を処分の袋と分けて確保します。片づけの進め方は遺品整理は何から始める?にまとめています。
| 書類 | 解体後に何に使うか | 無かったとき |
|---|---|---|
| 登記識別情報通知、登記済証(権利証) | 土地を売るときの本人確認の資料 | 法務局は再発行できないと案内。別の本人確認の方法で代えられる |
| 建築確認済証、検査済証 | 建物があったことの記録。売却時の説明、建替えの計画 | 再交付されない。市の建築指導の窓口で台帳の記載事項の証明を受けられる場合がある |
| 境界確認書、測量図 | 土地を売るときの境界の根拠 | 隣地との合意の記録は家の中にしか無いことがある。法務局に測量図が備わっているとは限らない |
| 固定資産税の納税通知書、課税明細書 | 登録免許税や譲渡所得の計算の基礎 | 市の税務の窓口で評価証明を取れる |
| 建物・設備の図面、修繕の記録 | 浄化槽・井戸・配管の位置の確認。解体の見積もりの前提 | 位置が分からないと、解体中に見つかって追加の作業になることがある |
権利証について法務局は、所有権の登記が終わったときに交付されるもので再発行はできないが、紛失しても別の本人確認の方法で登記申請はできると案内しています。無くても手続きは止まりませんが、あれば手続きが簡単になるので、解体前に探す価値があります。
止める設備と、届出が要るもの
設備の停止は、解体を頼む相手と時期を合わせます。電気と水道は解体の作業で使うことがあり、先に止めると作業が進まないことがあります。
| 設備 | すること | 誰に |
|---|---|---|
| 電気 | 契約の解約と、引込線・メーターの撤去の依頼。撤去は電力側の工事なので日程に余裕を取る | 契約している電力会社、送配電の会社 |
| ガス | 契約の解約と、メーター・配管の撤去。LPガスはボンベと配管の回収 | 契約しているガス会社 |
| 水道 | 解体中に散水で使うことがある。止める時期を解体を頼む相手と決めてから閉栓・撤去を依頼 | 市の水道の窓口 |
| 浄化槽 | 汲み取りと清掃をしてから撤去または埋め戻し。使用の廃止は届出の対象 | 都道府県または市の浄化槽の窓口、保守点検・清掃の事業者 |
| 井戸 | 埋め戻しや届出の決まりが市区町村ごとに違う。解体前に市へ確認 | 市区町村の環境・下水の窓口 |
| 電話、インターネット、放送 | 契約の解約と、引込線・機器の撤去 | 各契約先 |
浄化槽法は、浄化槽の使用を廃止したときは、その日から30日以内に都道府県知事へ届け出ることを定めています。届出の窓口は市が担っている地域もあるので、住所地の案内で確かめます。
アスベストの事前調査——2022年4月からの義務
環境省は、建築物を解体するときは石綿(アスベスト)が使われているかどうかの事前調査が義務で、2022年4月1日からは一定規模以上の工事について調査結果を都道府県等へ報告する制度が始まったと案内しています。解体では、作業の対象になる床面積の合計が80平方メートル以上の工事が報告の対象です。2023年10月1日からは、調査を行うのは有資格者に限られます。
調査と報告を行うのは解体を請け負う側ですが、発注する側にも確かめておくことがあります。
事前調査の結果を書面で受け取り、解体後も保管する
見積もりに、事前調査と、石綿が見つかったときの除去の扱いが含まれているかを確認する
吹付け材などが見つかった場合は、作業開始の14日前までに都道府県等への届出が要ると案内されているので、工期が延びることを前提に日程を組む
建物滅失登記——解体から1か月以内に法務局へ
建物を取り壊したら、登記簿からその建物を消す「建物滅失登記」を申請します。不動産登記法は、建物が滅失したときは所有権の登記名義人がその日から1か月以内に申請しなければならないと定め、正当な理由なく申請を怠った場合の過料を10万円以下としています。
申請先は建物の所在地を管轄する法務局です。申請には、解体した事業者から受け取る建物滅失証明書(取壊し証明書)を添えるのが一般的なので、解体を頼む段で、証明書の発行を依頼内容に含めておきます。相続登記が済んでいない建物を壊した場合の申請人については、法務局の登記手続案内で確認してください。
登記を残したままにすると、登記簿上は建物が在ることになり、土地を売るときや固定資産税の扱いで食い違いが出ます。解体の日程を決めるとき、登記を誰が出すかまで決めておきます。
市の解体補助は「有無」を市に聞く
国土交通省の空き家対策特設サイトは、解体・改修にあたって補助金や各種制度を活用できる場合があるので、まず市区町村のウェブサイトか窓口で確認するよう案内しています。制度の有無、対象になる建物、申請の時期は市区町村ごとに違います。着工後の申請を受け付けない制度もあるので、解体の契約前に市の空き家対策の窓口へ聞きます。
解体するか、建物を残して売るかを決めていない場合は、実家じまいの順番と相続した家をどうするか、誰に相談するかを先に読んでください。売却時の税の特例は、建物付きで売るか更地にして売るかで適用が変わることがあります。
解体の日を決める前の確認表
- 権利証、建築確認済証、境界の書類、固定資産税の通知を家から出して手元に置いた
- 浄化槽・井戸・配管の位置が分かる図面を確保した
- 電気・ガス・水道・通信の解約と撤去の日程を、解体を頼む相手と合わせた
- 浄化槽の清掃と廃止の届出、井戸の扱いを窓口に確認した
- 石綿の事前調査の結果を書面で受け取る約束をした
- 建物滅失証明書の発行を依頼内容に含めた
- 建物滅失登記を誰がいつ出すか決めた
- 市の解体補助の有無と申請の時期を聞いた
窓口の選び方は相談先を選ぶ、家の名義と処分に関する窓口は家の処分・相続の窓口にまとめています。